現代美術論「アメリカ現代美術は何を残したか」

 アメリカは、20世紀に入ると超合理主義にもとづく大量生産方式をすすめ、大量生産、大量消費の現代社会を生み出しました。 アメリカ現代芸術の独自性は、大量生産、大量消費による物質的社会からの<疎外>をそれぞれの作家がかつて例を見ない方法でその認識を競うようにディアレクティックに表現したことにあります。 この論では、戦後アメリカに生まれた一連の芸術表現(アート)を現代芸術の源流としてとらえ、その推移を追います。
戦後、他の国々もアメリカを典型として同様の物質的社会に変貌した結果、同じ根の現代特有の疎外を抱えました。そのためアメリカ現代芸術が他の地域のそれを先行するかたちになりました。従ってアメリカ現代芸術の表現概念とその背景を解析し理解することは、私たち自身のあり方を探ることにもつながるとかんがえられます。
この論は「現在」を探る一つの試みに過ぎません。この試みが、各人のさならる活動につながれば幸いです。 ここで参照した資料や文献は、一般に誰もが目にすることのできるものです。論の展開の必要から、多くの文や図版、写真などをそれらから引用させていただいていることをここにお断りしておきます。

2000年6月

P.Mondrian